月明かりなんて視界にない/かえで
インキュバスに魘されて
無性に誰かがいとおしい
手馴れて打てたあいつの電話番号も今では忘れて
きっと私はひとりになった
缶コーヒーの空は夜明けまで積まれて
脳裏をかすめては過ぎていくのは最後の捨てゼリフ
昔々を思い出しながら"Lover soul"を口ずさむ
「あなたと二人でこのまま消えてしまおう
今あなたの体に溶けて ひとつに重なろう
ただあなたの 温もりを
肌で感じてる 夜明け」
いつかのあいつの真似
歌をうたう私はなんだか上機嫌みたいで笑ってしまう
嫌なほど撮った二人の写真
捨てきれずにサイドボードを埋め尽くしている
手
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