あかるい艀/吉岡ペペロ
臼田雅代の財布に金はなかった
財布に金がなくても日常は消し込まれてゆく
アルバイトを終えて車で帰宅する
ふたりの恋人が今日も職場に遊びにきた
高田篤は同い年の不倫相手だ
篠木康太は六つ上の、話し相手だった
篤からのメールをチェックしていたら
篠木から電話があった
篤とセックスは最近ない
最近ない、というよりも以前の頻度ではない
それは篠木と会うようになってからだと思う
臼田雅代は夫とは別居中だった
単身赴任で和歌山にいるのだが
離婚も視野に入れた別居だった
この形からもう三年が経っていた
娘の面倒の大半は母が見てくれていた
雅代は五時まで小さな会社で営業事務
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)