灰汁/カンチェルスキス
波止場をうろつく
足のない鳩は 足を探している
飛べないで 地面を這いずり回ってる
誰かが残したパン屑のそばを
一心不乱に 突っついていた
ダッカ行きの貨物船が
停まっていた
鳩とは比べものにならないぐらい
巨大な
押し黙る鉄の塊
言葉を持つなら 自殺をほのめかす
足のない鳩は どこかで足を失った
使い捨てのライターのように
エサを探しているとき 足を探すのを忘れる
足を奪うのなら 羽を奪えと叫んでいる
錆びたフェンスの下で
切断された跡の残る足は
もう 温度は感じない
直射日光の避けられない波止場 漲る
ダッカ行きの貨物船は 仮眠状態
途切れる意識を 沈黙で脈打つ
あの船が遠くへ行くためには
海がいる
空回りする うろつく鳩の影
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