あこがれ/ゼロスケ
触れない海は
一本の線で表すことができる
松の梢からその線をくぐり
入ったり出たり 出たり入ったり
わたしには関係ないことさ
沖がぐらぐら沸き立った
あれほど引き止めたのに出て行った
湯気に包まれ煮えてるフェリー
たんぱく質が固まってミルク色
障らない硫黄の臭い
障らない椰子の実ひとつ
対岸の島まで奥行きがない
本当は怖いことなのに
届きそうに見えるから
出て行っちゃう
今朝も
重油をたっぷり飲み込んだ
ゼンマイ仕掛けのタンカーは
鯖の腹みたいな海面を基地まで滑っていく
穏やかな砂浜に寝そべり
頭を海水に浸したら浸すまま
眼は開いたまま何も
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