ホイール/瓜田タカヤ
「拝啓
すでに季節は冬だ
月日の経つのは早いもんだ
焼鳥屋にあった
熊肉はもう仕入れていないのだってさ
もともとそんなに
美味しいモノでもなかったのだしね
娘の子どもの親が逃げたのだってさ
まあ それで良かったのかもしれんがね
帽子は深くかぶった方がいい
町を出歩くときに
知らない人と眼が合わないようにな
知ってる人とも眼が会わないようにな
みんな多かれ少なかれ
心に傷を持っておるのだから
視線でスイッチが入ってしまわないとも
限らんからな
傷が吹き出してくるからな
気をつけてうまくやってかんと
ふさぎ込むようになってしまうさな
この町はそういう風に
なっておるんよ
そう・・・」
俺は最後の言葉を読んで
君の平和な中華料理を口に含み
温いコーヒーで唇を溶かした
「柔らかい絶望と
花束があれば
何も起こらないんよベイビー」
不格好な俺のホイールよ
カカオのドアを
引き裂いて!
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