立つ勢いの豚/カンチェルスキス
 

A定食。おれはA定食を食った。
薄いトンカツ、くたびれたキャベツの千切り。
笑い声は遠く、おれは食後に濃いコーヒーを黙って飲んだ。


忙しい時期が終わると
バイトのやつらは消え去った。


来年もあるんでしょ、ここのバイト。
ちょっとしんどいけど、みんなと会えたからよかったよ。
来年もやろうよ。またここで会って。
楽しかったよ、ね、また会おう。


新しいやつが第九ラインに配属された。
なぜかいつも帽子をかぶってる
ヒップホップ調の男だった。
ワキガの男と最初に組まされた。
次におれと組んで
クソ重いカタログの束をパレットに積み上げていった。


あの人、ワキひどく臭うでしょ。
こう、すれ違っただけで、もわーっときますよね。
自分で気づかないのかなぁ。


そうかもしれないですね。おれは答えた。


そいつは顔をしかめて、向こうにいった。
胃病のせいで
おれは口臭がひどかった。
それからそいつが話しかけてくることは
一度もなかった。





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