蝌蚪/木屋 亞万
 
るが
あれは実際にあったことなのか
あの筆の動きは幻を書いているようには思えない
ためらいなき運筆であるがゆえに
蛙が着物を纏って歩いている姿を夢に見るようになってしまった
彼らの着物には判子でついたような文字模様がついておって
それを見ると壊れたように声を出さずにはおれんのだ
嗚咽をともない涙がとめどなく流れるときもあれば
腹がよじれるくらいに小刻みに笑い続けることもある
鳴くということはこういうことだと呪いをかけられているのだ
それから最近うんこが寒天みたいに透けるようになって
消化不良を起こしておるのか
黒い球体がうんこに残ったままだ
小豆みたいに粒粒が埋め込まれておるのだ
むにゅりむにゅりと粒が痙攣しているようにも見える
そのため最近は心太や水無月、蒟蒻が喉を通らないのだ
手は痩せこけ、腹は中年のように太り、足も太くなり土偶のようだ
満腹でもないのにゲップの発作がやまず
拍子の早い吃逆のように喉が鳴るのだ
肺は絶え間なく痙攣していて息をするのが苦しい
おたまじゃくしの踊り食いなど、もうしないから
許しておくれ、と一体誰に謝ればいい

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