だきしゅうとく/竜門勇気
喉で凝り固まった
昨日からの冷えた激情
咳と一緒に道端に
吐き捨て
そのなかから
大事な物を拾い上げた
なぜって
僕は知らないうちに
いつも何かを失っているから
当然の自衛策という
そういうこと
唾棄された
赤い毛糸雑じりの唾
中にころりと
硝子玉が一粒
今日はこれを拾おう
どうせ明日の朝まで
もちはしないさ
どう見たって
こんなヒビが入っちまったら
朝毎に
増える消失の
自衛策としてのガラクタ
積み上がったのは
砕けちり待ちの
未来のアイソトープ
さあ
もうそろそろ
浴槽にチョコレートを
溶かしこむ時間だ
おとといの
唾棄の中から
拾得できた唯一の結晶
脅迫状をしたためながら
沸き上がる苦笑いを
鏡の中に移し込もう
いつのまに
得たのかはわからないが
毎朝吐き出す唾棄
冷たい氷のような唾液
そして
苦笑いをしながら
僕は拾得する
唾棄を拾得する
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