切離し作業と、重み/プテラノドン
マイクは入りっぱなし。他に誰もいなかった。
発車のベルのかわりに、ホームに、乗客たちの耳元に
駅員の下手くそな口笛が響き渡る。
眠ったふり。携帯電話をいじくるか、
外でタバコを吸う者もいる。(ここは東京じゃない)
時間だけが過ぎていく。駅前のロータリーに陣取るタクシーの目の前を
改造バイクに乗った少年たちが走り抜け、すぐ後ろを
パトカーが追いかける。昼間だ。歩道橋の上、頭上すれすれを電線が通り、
身長のばかでかい男が身を屈めて歩く。
気をつけろ!お前のせいで、辺り一帯停電するかもよ!
冷蔵庫はゴミ箱になるかもしれない。でもそこから意識は飛んだ。夜だ。
骨となったビニール傘が落っこちていた。最後に雨が降ったのは
いつだったろうか。切り離されたことで増すばかりの重量。
振り払えなくなってしまった。誰しもにのしかかる時間の
重み。鋏でチョキンと切り離すことすらも
持ち上げることすらできなくなった紙きれの
重み。
戻る 編 削 Point(0)