赤い月  (全)/……とある蛙
 
見て呆然としている。

絵は風景画のはずだったのだが
絵の中心には歪んだ顔をした子供が
苦しそうに僕を睨んでいる。

間違いなくその顔を僕は知っているのだが
いつ会ったのか、どこで会ったのか思い出せない。
名前は ま さ ……

背景の空は群青色の
不思議なグラディエーションで
しかも赤い月を中心に渦巻いている。

「君は誰だったか」
暗転して僕は
中空に赤い月の
ボーッと輝く
砂漠の中にいた。

僕の名は
ま さ ……
薄れて行く意識の中で
自分の名を思い起こす。

咥えていた絵筆は
人にメタフォルモーゼして

足には蹄では無く三本指、背中には二瘤
僕は絵の中で
自分を食らおうとしていた。

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