赤い月 (全)/……とある蛙
一
筆を持つ腕の無い僕は
口で絵筆をくわえ
カンバスに向かって
朱色を引いた
引いた朱色赤は次第に濃くなり
カンバスの中央で丸くなった
カンバスの下には申し訳無さそうな
地平線があり
空を無理やり作ろうとしていた。
僕は口でくわえた絵筆で
楽しげな駝鳥の青い顔を描いた
彼は地平線と反対方向を顔を向けている
そう、
駝鳥は僕の方を向いているのだ。
駝鳥は僕に語りかける。
うまくやっているか。
ばれないように演技しているか。
他人(ひと)を褒めているか。
他人(ひと)の戯れ言に付き合っているか。
他人(ひと)に羨望しているよう
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