忘れられない言葉/南波 瑠以
つ一つ出来ることが増えていった。その時は本当にそれだけで幸せだった。
今、私は車イスや杖を使いながらも、ゆっくりと歩くことが出来るまでに回復した。しかし、時に自分の歩く遅さや力のいる作業が出来ないことに苛立ちを覚える。道で人にどんどん抜かされたり、ペットボトルの蓋が開けられなかったり。そんな時、初めて歩けた時の感動や、徐々に体が動かせるようになった時の嬉しさを忘れてしまう。今の状態が自分にとって当たり前となっているから、そのことがどれだけ素晴らしいことなのかが見えなくなってしまっているのかもしれない。千恵さんの言葉は私にそのことを気付かせてくれた。
「みなさんに明日が来ることは奇跡です。それを知っているだけで、日常は幸せなことだらけで溢れています。」
その幸せを常に意識しておくことは難しいことかもしれないけれど、時にふと、感じられればいいと思う
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