やっぱりおおかみ/角田寿星
 
『やっぱりおおかみ(佐々木マキ、73年、福音館書店)』


0(プロローグ)

(おおかみは もう いないと
 みんな おもっていますが
 ほんとうは いっぴきだけ
 いきのこって いたのです
 こどもの おおかみでした
 ひとりぽっちの おおかみは
 なかまを さがして
 まいにち うろついています)


1

影のない おだやかな光に包まれたみちは
明るすぎて あまりにもなつかしい
くろい影をおとすのは ただひとり
ひとりの おおかみの子供だった
両手をポッケに つっこんで
まだ生えそろわない牙を もぐもぐさせて
仲間を探して 毎日うろついて

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