水平線/百瀬朝子
古いあたしが褪せてゆく
散った涙に悔しさを流す
太陽がはがれる
淡い憎しみが滲む頬
ぬぐって、
ぬぐって!
ぬぐってよ!
手の甲を焦がすほど強く
きっと皮膚の再生は追いつかない
きっと心なんてもっと脆い
重力の速さで堕ちてゆく
孤独が今日も昇る
近づけない水平線を追うように
未来への侵入を試みる日々
あたしたちは朝日や夕日を浴びて
頬を染めて
波に馳せて
愛なんか語っちゃって
陳腐な記憶を刻んでく
遠くに浮かんで見えるあの船には
きっと数人の船乗りがいて
あたしのことなんか
小指の爪くらいにしか
見えていないんだろう
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