結び目/あ。
樹齢いくつとかわからないけれど
ぼくより長く生きていることは間違いない
その身体のあちこちは皮をはがされ
表面に色の濃淡を作り出している
そんな老木のたくさんある枝のたった一本に
か細く結わえられた糸が垂れていた
糸は強すぎる風に身をゆだね
振り子時計のように
時を刻んでいるかのように
先に縛られた玉虫を大きく揺らしている
この辺りの子どもがいたずらしたのか
いつからここにいるのかは知らない
生きているからさほど日にちは経ってないはずだ
彼を解放したくなったのは
ぼくの中途半端な正義感か自己満足か
うまく説明することは出来ないけれど
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