釣竿/プテラノドン
本当は隣にあったMONKEYを盗もうとした。けれども誰も
運転できなかった。車の運転はできるってのにお前は、
「使えねえな」と言って、ジョーイがサモンの尻を蹴った。
二人が唾のかけ合いをしている間に僕は、開けっ放しの
ハイエースのトランクに突っ込まれていた釣竿を引っ張り出し、
川岸で座る持ち主たちに吠えて合図した。その自分たちの背丈よりも
長い竿を抱えて走るには、コツが必要だった。旗を立てるような恰好で
僕らは草むらを突っ切った。途中、何本か落とした。
それから手に入れたうちの何本かは別の友人にくれてやって、
一番気に入っていた竿は、夜釣りでナマズにへし折られた。
残った最後の一本を後生大事にもっているのだろう。
そう思っていたが、昨日、生徒にあげてしまった。
僕は言った。「いいかお前、盗まれるなよ」取替えのきかない
そのものを。
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