ダメになる日/いのせんと
雨が降り出して、どうしようもなく温い空気の中
親指の爪の赤い色が濡れていくのをじっと
見つめたままでいるのは、ただ一人きりの私で
傘なんて必要ないと
駆け出した姿を
ガラス窓の向こうで見ていたのは
少しだけ悲しそうなアナタのような気がした
名前を呼ばれたような気がして振り返ると
そこにあるのは、ただ降りしきる雨とその音だけが
永遠に続くはずだった時間の隙間を埋めようとしているかのようで
もう
濡れるのは赤く塗られた爪だけじゃなくて
この瞳もすっかりと濡れてしまったみたいだよ
私
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