セミ/Kazu.
 
さに打ちのめされていて
まったくセミやトンボどころじゃなくて
「身は空蝉の心地して」
カゲロウのように
空気だけ食べて生きていかれたら
なんて考えていた

たぶん 生物学的には
いいもわるいも言ってはいられぬ
切羽詰まったなりふりかまわぬセミのオスたちの
愛の絶叫と考えれば
ヒトのオスとしてはちょっとは同情できるよ

ところで蝉って
翅を擦って鳴いているんじゃないって知っていた?
それから一生が七年というのや
地上に出てきて一週間っていうのも
確かな根拠があるわけじゃないんだってさ
言っても聞いてくれる娘は
ここにはもう いない

どこかでヒグラシが一匹 鳴いている
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