白い世界/葛西曹達
 
帰り道に見たのは
幻なんかじゃなかった
でも夜が開けて外を見たら
雪は積もっちゃいなかった

子供の頃に夢見たのは
白銀の世界の王国
でもこれじゃお城どころか
雪だるますら作れない

かじかんだ手は
ポケットにつっこんだまま
温かい世界の
扉を開けるまで

街路樹はすっかり葉も枯れて
コンクリートだけが続いていく
今にも落ちそうな鈍色の空
白く濁った排気ガス

鮮やかな夢を見た後で
引き戻される寒い部屋

世界が真っ白になったら
僕は何色を持てばいい?
あまりに広すぎるキャンバスに
僕は何を描いたらいい?

僕の吐いたため息は
ガラスを白く曇らせる
指で描いた小さな窓

そこに広がる大きな世界
いつもと変わらないんだけど
街の灯がとてもきれいだ
僕は窓をもっと広げた
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