「うつわの水」/月乃助
 
億もの鋳型が作られ、形をなし
それを満たすことに
どれほどの力が支払われたのか、

それよりも、
器をなくしたときから、そこへいれるものを
たとえそれが共有するものだろうと、△【〓】▼
もう心配しなくてすむはず
もうなにもいらないと、ほっと 胸をなでおろしてよいのです
そんなことは できないと、あきらめるよりも
それができると、信じながら、

水が支える 啄木鳥に水鳥の
波紋に舞う枯れ葉に、木々の影
映す空さえも もう水の仕事ではなくなります

【 池の水の寡黙には、そんなイミがあった 】
 
それを理解している水鳥だけは、
ものおとに飛び立つと、
石橋のアーチの下を、水にふれずに飛び去っていきます
池の 限られた自由を、ヒレのついた足に
いちどは蹴りながら 人造の橋を
人のやることなどと、嘲笑い
渡り鳥のふりをして、また、ここへと
もどってくるくせに、







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