夜へ 夜へ/木立 悟
 






途切れた道のその先
坂を上りきった場所の空
曲がり角をすぎてゆく陽
曇と 曇ではないものの午後


暗がりのなかの道標が
なかば暗がりになりながら
暗がりの歩みを導いている
みどり死す日に 生まれる日に


雪と陽のくりかえしから
何も無い場所に増してゆくもの
透明のはじまり
瞬きのはじまり


シラブル シラブル スタッカート
彼は何故あんなにも
呼吸のようにうたったのか
ただそのままに 降るままに


土の下の真実を
照らす歩行者の痛みがあり
刺すものを防ぐ外套もなく
こがねの埃をすぎてゆく


会うべくして会
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