展開する身体/ななひと
ゆるやかに弩放たれ、
手のひらが裂けてゆく。
破れていく皮膚がいろいろな声とともに散る。
なにものかを握ろうとしていた形そのままに、
散乱していく限りなく薄い感触は、
体温を残す残像となって、
誰もいない空間に降り注ぐ。
驟雨。
人間の破片を呼吸する、
空間に差し挟まれた異物。
眼が鼓動とともに波打ち、
言葉のような視線が、とぎれ、
存在はさざめいている。
絡み合う神経と血流が、繁殖を繰り返し、
希薄な身体は世界に編み込まれてゆく。
それは網状の球体となって、
したたり落ちる、身体の中に身体が、繰り返し、
寄せ返す波となって、
形にならないある形象をなぞらえてゆく。
ぞんざいに破り取られる、
貼り重ねられていく、
すでに形を失った重量が、
傾いでゆく、継ぎとめられた表情を汚し、
脈打つ舌のように膨らんで、
単色な印象を綴じ込めていく。
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