ある日の夜/いのせんと
 
それは、誰にも気づかれずに腐っていく
赤い雫をたらしてそこにある

弾力は失った

僕はたまらなく愛しい気持ちになる
だから

舌先でそれを舐めあげた

白くて薄いウェハースを
噛み潰す
甘く広がる夜の闇に
ダイブする夢を見た

それは、誰にも気づかれず腐っていく

ジントニックに沈めた身体を
丁寧に指でなぞる
そこに触れた
あるのはかすかな痛みだけ

踏み潰す
腐る前に

醜い姿を
曝け出せよ
戻る   Point(0)