ひとつ、ひとりひとつ/霜天
泣き虫だったあの子は今どうしているだろう
と
眠いだけの午後の中で
当てはまるように浮かんでくる
絡まりそうな思考を
かき分けるように居座る
昔、記憶
ひとつ
指切りで交換した約束を
忘れているようで
飲み干しているような
すとん
真ん中で
居座られて
困るような、困るような
ひとり
夕暮れが傾いて
斜めになっている教室で
ひとつ
白いチョークで
大きな丸を描いていた
あの子
歪みのないあの円を
きれいに切り取れたなら
潜り抜けられただろうか
どこかへ
ひとつ、ひとりと
指切りの繋がり
今もどこかで
泣いているような
確信めいて
刺のような痛みで
いつまでも抜けなくて
困るような、困るような
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