発条と心臓/
古月
ぜんまいが壊れたから、神様が代わりに心をくださったの。祖母は私だけに、内緒でそう教えてくれた。昔ね、おばあちゃん、お人形だったのよ。とってもきれいな、きれいなお人形……。私の手を握る祖母はそう呟くと眠るように目を閉じ、それっきり、もとの人形に戻ってしまった。
あどけない少女の寝顔のままで綺麗な箱にしまわれた祖母が、確かに人間であったことを、私は大人になった今も、ずっと忘れずに覚えている。
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