冬の大三角に見守られて/瀬崎 虎彦
あたしには他人が何を考えて生きているか
本当のところ分かっていないけれど
たぶん全員が自分と同じように悲しんだり
うれしくて涙を流したりするんだろう
抱きしめられるように花ひらく
泣きながら笑うマグノリア
君が僕の一番大切なものになって
僕は毎日少しずつ強くなる
くちづけるたびに揺れ落ちる
こころはあまりにもたくさんの
涙をじっと隠していたものだから
沈黙する建物の屋根を眺めて
僕は屋上から静かに降りていく
冬の大三角に見守られて
戻る 編 削 Point(5)