ノート(花の季)/木立 悟
 


むしっても
むしっても
手のひらから花が現われる
涙の音を聴く
破られ
重ねられた紙が
光に波打つ音を聴く



灰青と灰緑に冬をひろげて
いとなみの空ははじまった
遠くと近くのおこないといさかいをすぎ
醒めるように互いの目と目をむさぼり
ただ朝の音にひたされたまま
他を押しのけることなく重なりつづける
重さのない花のからだ



もてあそぶようなはじまりから
ほぐしても
ほぐされても
けして途切れることはなかったのに
いつのまにか時間の花弁をのぞきこむほど
遠くまで遠くまで来てしまった



はじまりつづける空の空
膝の動きで変わる世界に立ちながら
わたしはまだ
あなたの冬を見ていない






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