カナシミビトの森/白糸雅樹
 
すべての人はかならず一度は行ったことのある場所
そこがカナシミビトの森
そこに行き着く道は誰も知らないが
ふかくふかく哀しい時
いつのまにか辿りついている森
 
そこにはカナシミビトが住んでいる
人が哀しむ時
傍らにはカナシミビトが現れる
そして不器用に
歌ったり踊ったりしてその人を慰めようとするのだが
あまりにも不器用で下手な歌と踊りなので、ちっとも慰めにはならないのだ
 
カナシミビトが現れた場所は
すなわちカナシミビトの森になる
人は気がつけばそこにいる
だからそこに行く道は知らなくてもいい
ふかく哀しい時に必ず辿りつく森
 
しずかで深い針葉樹
ゆれ
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