『あなたの背中を昇る龍』/東雲 李葉
 
久々に会ったのに眉間に皺を寄せながら、
相変わらず難しい話ばかりしている。
とりあえず分かった振りをしたりしながら、
窮屈そうに生きている大きな背中に腕を回す。
あなたはいつも私の知らない世界にいるみたい。
眼光鋭い緑の龍に爪を立てて。
捕まえたって笑って初めて、あなたは生きてる顔をする。
虚ろだった両目にやっと私だけを映し出す。


心地好いまどろみの中でかすかに感じる。
不器用そうに頬を撫でる熱のある掌。
とりあえず眠った振りでそれを受け入れて、
ほんの束の間の幸せを泣きたいほどに感じるの。
明け方には慌ただしく上着を羽織って、
私の知らない誰彼とお仕事に行ってし
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