天文学者/セルフレーム
どお前がもしもそんな状況に陥ったら
父が双子だったなど
私は聴いたことなどなかった
父も母もきっと
妹や弟を案じているのだろう
それでも
それでも私は天文学者になりたいのだ
いつか宇宙に行けるようになるだろう未来で
私の名を空に持っていってほしいのだ
と
父は夕食を口に運び始めた
これは「承諾」の印だ
母も妹も弟も
それに続くように
夕食のシチューを口に運び始めた
私もゆっくりと
夕食を食べた
あたたかい
最後に一緒に食べた夕食だった
あれからどれだけ経っただろう
今年の冬になる前に
私は家に一度帰ろうと思う
今日の新聞の見出しは
『Family of the Red Planet』
“赤い惑星の家族”
である―
天文学者
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