水と子/木立 悟
 
塀のむこうは さみしく明るい


すべて止んで すべて止む
すべてから外れたものだけが
夜に添われ
次を照らす


長い間 野は未明で
未明を受ける未明を
確かめることなくまたたいている
(またたいている またたいている)


瞳のつらなり
夜中に水を請うこども
貝の裏側 葉の裏側の
口伝えの地図をひとつ呑む


風をいくつもいくつも引きつれ
水のなかをただ激しくし
石や青をまばたきに敷きつめ
夜の上の午後は華やぐ


つながりのないつながりから
手足は降ろされ また昇る
水の淵を歩く群れ
水に映り 映らない群れ


稲妻が遠い稲妻を見上げる
川から生まれる銀の息つぎ
地のかたちを巡るうた
午後の菓子をひたすうた


















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