絵描き/……とある蛙
 
筆を持つ腕の無い僕は
口で絵筆をくわえ
カンバスに向かって
朱色を引いた

引いた朱色は次第に濃くなり
カンバスの中央で丸くなった
カンバスの下には申し訳無さそうな
地平線があり
空を無理やり作ろうとしていた。

僕は口でくわえた絵筆で
楽しげな駝鳥の青い顔を描いた
彼は地平線と反対方向に顔を向けている
そう、
駝鳥は僕の方を向いているのだ。

駝鳥は僕に語りかける。

うまくやっているか。
他人(ひと)を褒めているか。
他人(ひと)の戯れ言に付き合っているか。
他人(ひと)に羨望しているような顔をしているか。
必要以上に他人(ひと)と話さないようにしているか。
さえない面構えを他人(ひと)に見せているか。
ばれないように演技しているか。
目立たないようにためこんでいるか。



僕は絵筆を口にくわえたままニヤッと笑った。
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