汚れた川面を見つめている右目だけのアリサ/ホロウ・シカエルボク
日の暮れかけた堤防沿いに横座りして汚れた川面を見つめているアリサ
「時々この川がすごく美しい流れに見えることがあるわ」と彼女は言うのだ
アリサの左目は幼いころに父親に傘の先で突かれてまったく機能しなくなった、まるで生きてる目のように動くが
その存在意義はミルク飲み人形のそれとたいして違いはなく、ただまぶたの下でころころと転がっているだけであった
「この景色が誰かに見えないかって思う時があるの、わたしが見てるみたいにきらめくものに見えないかって」
アリサは自分の目の話をよくする、だけど自分の父親のことはめったに話すことはなく
他に家族がいるのかという問いについ
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