不在の一脚/古月
 
翳る陽差しの塞ぐ
瞼の速度で忘れている
閉じた瞼を開くことも
塞いだことも忘れている


 *


大好きな人たちだけを集めて
楽しく暮らせればそれでいいのに
暮らしの中には不愉快な規範や
あなたにそぐわぬ規則がある

わがままを言うだけの椅子が空けば
食卓は明るく豊かな筈なのに
それはそこに依然としてあるままで
片付けられるのを待っている


理想に打たれる雨の相槌を
調子外れの歌に打つ膝を
歌の上手な小鳥の真似で
羽の綺麗な蝶々の振りで

あなたを愛する人の優しさは
あなたの不在で成り立っている
数え切れない空っぽの椅子に
数え切れないあなたがいる


 *


昨日
あなたはわたしを思う
あなたは皆を愛している
わたしの思う
あなたを思う


今日
わたしはあなたを思う
わたしは皆に愛されている
あなたを思う
あなたを思う


明日
あなたを思う
あなたは思う
あなたを思う
わたしを思う
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