航路/三森 攣
 
、別の世界へ目指していく。


もし空が彼を赦したなら、彼は広い大空を泳ぐでしょう。
空が彼を祝福するでしょう。


捨てられた世界は動かない。
世界の主に捨てられた水面は虚ろに呆け
ゆっくりと錆び付いていくでしょう。


彼は空の祝福に歓び、感謝するでしょう。
無上の悦びを得るでしょう。


しかし彼は同時に知るでしょう。
祝福で渇望は満たされないことを。
代替は利かないことを。
渇望と憧憬に満ちた世界を失くしてしまったことを。


彼は涙を流さず、泣くでしょう。


泣き声はかすれることなく響き渡り、いつしか彼は
鳥になるでしょう。


帰るべき世界を求めて彼は、空を裏切る弾丸になるでしょう。
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