航路/三森 攣
金魚はきっと世界を弾丸に替える目を持っているでしょう。
静止しているか光速の平行移動で過ぎ去る世界しか、彼にはわからない。
一心に水を蹴るのは、少しでも世界を動かすため。
動く世界を渇望しているから。
彼が動かなければ、世界は動かない。
波紋を立てるのは、きっとそんな世界にたまらなく苛立っているから。
目で追えない世界に堪らなく厭いているから。
波紋で世界は壊れてくれるから。
それでも時間がたてば世界は元通り。
波紋は結局世界を変えてくれない。
いずれ金魚は世界を憎んで力を溜め
飽くなき空へ飛び立つのでしょう。
彼は彼を愛した世界を捨てて、別
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