ニゲラ/みつめ
彼は、ふれる 十五才のけだるい衝動にまかせて
うるんだ灰色の天体から さかさにみている
やわらかい五線譜が 痙攣する舌先でおどるのを
彼は、ひらく しろいスカートのような天蓋のもと
ひんやりと燃える舞台から さかさにみている
おのれの箱庭のいりぐちでよがる 無数の女を
さも、偉そうに。
彼は、ねむる スーパーカーにのった夢うつつ
(まきあげる塵は幾億のながれぼしとなる)
低く垂れ下がったトウキョウの空から さかさに見ている
いまだまみえぬひとびとが半狂乱になるいつか、を
そしてわたしは
誰が為 彼の為
この身を燃やし
はいになるだけ
きえるだけ
その夜、渋谷は記録的な大雨になった。
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