ひかりのうた/木立 悟
 


踏みしめるたび
声の断片が舞い上がる
まだ若い木々の丘
蘭が緑を喰む丘で
命は光を喰んでいる
息は涙を喰んでいる



光はゆっくりと坂を下り
上りゆく雲とすれちがう
丘の木々はかがやいている
空は色の無い色一色に立ちはだかり
まぶしく木々を摑んでいる
近づく光
こぼれる光
坂に木々を描く光



次々と速さを増す音で命を洗い
溶けることのない山頂の雪を聴き
光はひとりの狩人になる
武器を持たない狩人になる
何も見えないかがやきと
すべてが見えるかがやきをくりかえし
狩人は丘に立っている
光に光をさしだしている

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