芳香/あ。
雨上がりの濡れた空気に
しっとり染み込む芳香は
垣根の向こうの金木犀
乾き始めたアスファルトに
規則正しくむちを打つのは
子どもが回す赤いなわとび
吸い込みすぎて重たくなった空気を
赤いなわがかき回す
かわいいかわいい橙の花びらが
ふるふるふると小刻みに揺れる
縦も横もごちゃまぜになって
此処が何次元なのかも分からなくなって
余りにも濃密な芳香に酔っているのか
風邪気味でぼんやりとしているせいか
夢の中に出てくる美人は
こんな香水をつけていたように思う
作られた香りでもないのに
どうして艶を感じてしまうのか
今わたしに出来ることは
風邪薬を飲んで布団にまるまって
種類のわからない熱が下がるのを待つだけだ
同じ夢を見ることはわかっていても
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