Babelogue/ホロウ・シカエルボク
晴天には雨を忘れるから、いつか遠い国で無残に殺された幼児のニュースも(そういえばそんなこともあったねえ)なんて言葉で語られるだけのものになった。ベッドの上で、音を出さずにテレビをつけて、ただ画面をじっと眺めていた。自分にとって短いとは言えない人生の中でたったひとつ、上手くやれることのひとつ、すなわち、「無為に時を過ごす」。手のひらから零れおちていくものが多くなるにしたがって、あらゆるもののボリュームを上げることをしなくなっていった。叔父さんの形見の、とても素敵な音がする年代物のコンポを持っていたけれど、気前のいいアンティーク・ショップに高値で引き取ってもらった。ボリュームのつまみをゼロにし
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