1989年の少年に/都志雄
(Dear, ol' boy)
壁は鋼鉄ではなかった。
広場の祈りは食いちぎられた。
トーキョーは宴の翌朝に蒼ざめ、
ヒトの羽が突然変異を始め、
奔流となった飢えた想念たちは光の蝗になる。
それからのこと。
おれたちは
何におびえていた?
裏切り者の鎮魂歌と
塗りたくられたぎらつきの間で
この夏もまた
記号の汗なめながらおれたちは
機械仕掛けの神殿から立ちのぼる
道化たちのうすら笑いと
沈黙の凝視を浴びている
仮面舞踏会の衣装のままに
反逆の天使たちは素顔を隠し続け
川はお構いなし
神々もお
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