チャルメラ ☆/atsuchan69
 
その摩訶不思議な調べは、
けして妖魔を封じる術の音などではない
草木も眠る丑三の刻にひびく――
あえて眠らぬ者たちへと告げる、
慈・悲・喜・捨の警笛だ

幽かに香水の匂う背広を纏って
俺は上品ぶった女狐の巣窟から俄然とび出し
水玉のクラバットをまだ頭に巻いたまま
人気ない路地の暗がりで大きく、
さかんにパーの手を振る

 おーい、チャルメラの親仁ぃ〜

とことん酒を呑んだ俺の身体が、
なんだか薄切りの叉焼だの鳴門だの
少し異臭のする支那竹だの、
青い薬味の葱だの海苔だの半熟の煮卵だのが載った
仄かに淡褐色をおびた鶏殻ベース醤油味の
夜の深みが縮れ麺に滲みて、ギ
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