役者/練
きみがうなだれた
その角度に世界は動く
腕を伸ばせばそこに
光が見える
これでいいですか
きみがきみに戻って訊き
もっと高くとか遅くとか
わたしは何様なのだろう
四時間の稽古のあいだだけ
思い通りになるのか
左手のなかで丸まった台本
ありふれた苦々しさに
みとれる
そんな動詞を知っていた
こんなことだとは知らないままに
きみがきみならよかった
リノリウムの床の上の
ジャージにTシャツの後輩という名の
きみと
きみの
密接な差のかさなりの眩暈に
ぱん
わたしが手を叩けばまた
きみがきみに戻る
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