役者/
 
きみがうなだれた
その角度に世界は動く
腕を伸ばせばそこに
光が見える

これでいいですか
きみがきみに戻って訊き
もっと高くとか遅くとか
わたしは何様なのだろう

四時間の稽古のあいだだけ
思い通りになるのか
左手のなかで丸まった台本
ありふれた苦々しさに

みとれる
そんな動詞を知っていた
こんなことだとは知らないままに
きみがきみならよかった
リノリウムの床の上の
ジャージにTシャツの後輩という名の
きみと
きみの
密接な差のかさなりの眩暈に

ぱん

わたしが手を叩けばまた
きみがきみに戻る
戻る   Point(2)