夜と電柱/草野春心
秋の夜の
電柱……
たとえばそこに
世界が着床する
ありふれて
ひとつに結ぶ
街の残像
心の残響
季節はやがて
橙色の
予感をともして
なにかを拒むように
そっと笑む
電柱……
それは
すでに受け入れている
すべすべした
金木犀の匂いを
隅から隅まで
でも言葉は
唇から飛び散って
世界を求めるだけ
(もっと、
(それから、
(だとしても……
言葉は
ただ求めるだけ
僕、も
私、も無いところから
漏れてくる音を
そのようにして
秋の夜は
しずかに薫る
金木犀を
肌のように纏って
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