月の光は甘い蜜のように滴っていた/HTNYSHR
を書き換えることもままならない
弾けたのは光の滴だけではなかった
堰を切って流れ出した景色が焚き火の中を小走りに巡っていた
そして、夜の明けた秋空には
白けた月が抜け殻のように、風が吹けば崩れてしまいそうな質感で浮かんでいた
堆積した落ち葉を踏む音がする
岩の上に生えた花の周りを飛ぶ黄色い蝶々がいる
朽ちた古木が柔らかく解けているのがキレイ
朝の水辺には何もない
靜かな水音がそっと頬のあたりを撫で上げて
つかの間の眩暈のように消えてゆく
月の光は甘い蜜のように滴っていた
焚き火の中の景色は網膜の中に残された傷跡のよう
いつか見た光を
また見たいと思う
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