月の光は甘い蜜のように滴っていた/HTNYSHR
欲しいモノがあったわけでもなく
ただ切り取られた景色の中を歩いていた
森の夜は
蜜のように甘い月の光が滴り落ちるかと思うほどに澄んでいた
少し疲れていた
と言うよりも靜かな場所を探していた
水の音だけが
透明な響きとなって聞こえていた
辿り着いた水辺では密やかな震える声が
水底に落ちた微かな光に気付かせてくれた
月の光が透明な水底の砂に反射して
甘い露の玉となって弾けているようだった
全ての景色を変えてしまう瞬間というのは
確かにあるのだ
変わってしまうということは
全てが退屈に堕してしまうことでもあるが
それでも手を伸ばさなければ
読み尽くされた物語を書
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)