月の光は甘い蜜のように滴っていた/HTNYSHR
 
欲しいモノがあったわけでもなく
ただ切り取られた景色の中を歩いていた
森の夜は
蜜のように甘い月の光が滴り落ちるかと思うほどに澄んでいた
少し疲れていた
と言うよりも靜かな場所を探していた
水の音だけが
透明な響きとなって聞こえていた

辿り着いた水辺では密やかな震える声が
水底に落ちた微かな光に気付かせてくれた
月の光が透明な水底の砂に反射して
甘い露の玉となって弾けているようだった

全ての景色を変えてしまう瞬間というのは
確かにあるのだ
変わってしまうということは
全てが退屈に堕してしまうことでもあるが
それでも手を伸ばさなければ
読み尽くされた物語を書
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