つぐむ/蒼木りん
報道関係者 照明機材 中継車 忙しなく出入りする
逐一携帯で話す
身分証明を首から提げた 異質者たち
捜索隊のバスは連なって
無言で帰る
小さな手を
つないだ手を ぎゅっと握っていた
暗い どこまでも暗い
それでも 今日も
川は絶えることなく 同じ音で流れていた
瞳に映ったものは
それでも 寄り添って 笑った
水
喉が渇いていたんだね
それも忘れるほど
血
それも
感じなくなるほど
なにも 言えない
ただ こころが痛いだけで
ここには
本気がないから
本当の気持ちを 言うことも 実行する勇気も 気力も ないから
誰も楯にはなってくれないんだね
張りぼての正義に
眼を背ける
なにも 言えない
ただ こころが痛いだけで
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