夜の意識/塔野夏子
 
時の棘が蒼い
硝子窓は中空で沈黙している

ゆっくりと沁みとおる夜の重量

稀薄な我の裏側に貼りつく
濃密な我

深淵で暗い薔薇がひらく
鈍色の魚が円を描いて泳ぐ

記憶の闇を抱いてざわめく木立

塔の向こうに紫の惑星が沈んでゆく
かすかなスキャットが聴こえる

流体の我を堰く
硬質な我

もはや誰の訪れも待たないひとつの椅子

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