覗き見る月/千月 話子
夜の始まりの冷めた月から
白い涙が零れ落ちるように
白鷺が降下する
静かな寝息を立てて眠る彼女は
広いベッドの左側で三日月になる
睡眠不足の瞼はぎゅっと閉じられて
月明かりに照らされた
身動き一つしない体が
大理石のように美しいと感じる
空けられた左側の乳白色のシーツには
より一つなく
凪のように滑らかなそこに浸ってみたくなる
尻からそっと沈んで
さざ波のようにゆっくりと
水面を泳ぎ
彼女と同じ三日月に擬態してみる
寄り添った私達に月明かりは無く
窓際のそれに憎憎しく言ってみた
「崇高な月よ 嫉妬なんかするな」
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