四行詩四態 <9>/nonya
 

「妖」


熟れた日常を引き剥がし

馴染んだ名前を脱ぎ捨てて

あなたの熱は儚く溶けた

残り香だけを朝に置き忘れて




「怪」


仄暗い四辻を右へ折れた時

背骨に宿った青白い爪の感触

心の鬼を目覚めさせないように

慄きながらコンビニを目指す




「変」


変な音にあずきとぎを聞いたことも

変な風にかまいたちを感じたことも

変な光にきつねびを見たことも

変な人と街は忘れたことにしている




「化」


昨日と今日の境目に

きっぱりと紅をひいた君は

未練の尻尾も残さずに

明日の青空に化けた



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